現代社会の抱える闇に切り込む楡 周平の作品 超おススメです!!


楡周平のプロフィール

楡 周平(にれ しゅうへい)
1957年生まれの作家。慶應義塾大学大学院修了。綿密な取材と圧倒的なスケールの作品で読者を魅了し続けている。米国企業在職中の1996年に発表した初の国際謀略小説『Cの福音』がベストセラーに。翌年から作家業に専念し、同作は「朝倉恭介」という人気シリーズになった。
主な著書にドラマ化された『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』(「有川崇」シリーズ)に『プラチナタウン』(「山崎鉄郎」シリーズ)、『再生巨流』、『ドッグファイト』、『和僑』、『レイク・クローバー』など。

何故、楡周平の作品に惹かれるのか??

楡周平の作品はどれも現代社会の抱える問題に切り込んでいて、しかもその内容はテレビでは問題にすることすらタブーになっているようなことが多いので著書は非常に読み応えがあります。

小説執筆の初期に悪のヒーロー・朝倉恭介を主人公としたシリーズ小説を刊行。正義のヒーローとして『クーデター』から川瀬雅彦も登場し、このシリーズ6作は読み応えあり。

また「再生巨流」などの経済小説も執筆されており、社会の抱える問題にスポットライトを当てた多くの作品を手掛けており、特にサラリーマンにおススメの作品が多い。

楡周平の作品紹介

1. サリエルの命題

[あらすじ]
日本のとある離島で突然発生した強毒性の新型インフルエンザで島の住民が瞬く間に全員死亡。そのインフルエンザがとうとう日本本島にも広がり始め。。。。
ワクチンもなく、副作用が懸念される治療薬が政府の判断で緊急製造されるが、感染が拡大しても全国民にはとうてい行き渡らない。刻々と事態が変化していくなか、治療薬を与える優先順位はどのように決めるべきなのか?将来ある若者を優先すべきか?お金を持っている人が優先されるのか?果たしてパンデミックは回避できるのか?

[感想]
全体的にワクワク・ハラハラしながら読み進められました。
新型インフルエンザが基となり、超高齢化社会である世界に類を見ない日本の現状(医療制度、健康保険制度、社会保証制度)についての問題提起をされており、一考する内容であった。
また、「パンデミック」が今年の流行語となる勢いのまさに今読むべき本だと思う。

2. 骨の記憶

[あらすじ]
東北の没落した旧家で、末期癌の夫に尽くす妻の清枝。ある日そこに五十一年前に失踪した父親の頭蓋骨が宅配便で届く。差出人は集団就職で町を出た翌年、火事で死んだはずの同級生・長沢一郎だった。「骨」に込められた思いと秘密とは?高度成長期の昭和を舞台に描かれる、成功と喪失、そして復讐と因果の物語。

[感想]
岩手県南部の貧しい農家に生まれた一郎が、小学六年生の時に人殺しに加担してしまうシーンあたりからの集団就職で上京し、火事をきっかけに別人として生き、それから自らの才覚を武器にのし上がっていくサクセスストーリーが見事なまでに描写されており、一気に読み進めることができた。だが女運が非常に悪く、ストーリー中盤以降に再婚相手との関係が冷え切ってからは、復讐と嫉妬に残りの人生を賭けるような生き方になってしまい、読んでいて切なかった。

お金と名誉を手に入れた先に待っていたのが幼馴染や妻への復讐心を達成させるための奔走あった。最後の終わり方も誰も幸せにならないのでラストは重苦しい余韻が残るが、凄く面白い作品であった。

3. TEN

[あらすじ]
戦後の動乱期、横浜のドヤ街で当たり屋稼業をして暮らす「テン」こと小柴俊太は、幼馴染と偶然再会した縁で、料亭の下足番として雇われる。ある日、幼馴染の上司でもあるムーンヒルホテルの次期社長・月岡に見出され、彼の運転手を務めることになる。やがて月岡の会社に就職した俊太は、学歴はないものの独創的なアイデアと度胸で次々と実績をあげ、異例の出世をしていく。ところが、ある事件が発覚し、会社は上場廃止の危機に陥る。一連の騒動の背後には、思いもよらぬ人物の裏切りがあった・・・・・・。

[感想]
現代版豊臣秀吉のサクセスストーリー。学歴はなくてもアイデアと努力で上り詰めていく姿は圧巻。ビジネスや仕事への考え方で参考になる図書です。素直に真摯に努力しても成功は約束されないけれど、「努力しなければ成功することはないこと」と「働くことの真髄を知った」1冊でした。読みやすさのおかげで、ページ数を感じず一気に読めた。本当におもしろかった! 傑作です!! 

4. 終の盟約

[あらすじ]
認知症になった親が死を望んでいたらあなたはどうしますか。ある晩、内科医の輝彦は、妻・慶子の絶叫で跳ね起きた。父の久が慶子の入浴を覗いていたというのだ。久の部屋へ行くと、妻に似た裸婦と男女の性交が描かれたカンバスで埋め尽くされていた。久が認知症だと確信した輝彦は、久が残した事前指示書「認知症になったら専門の病院に入院させる。延命治療の類も一切拒否する」に従い、父の旧友が経営する病院に入院させることに。弁護士をしている弟の真也にも、事前指示書の存在を伝えた。父の長い介護生活を覚悟した輝彦だったが、ほどなくして久は突然死する。死因は心不全。しかし、あまりに急な久の死に、疑惑を抱く者もいて――。認知症の父の突然死。医師同士による、ある密約。医師の兄と、弁護士の弟は、真相にたどり着けるのか。

[感想]
高齢化社会を迎える日本の現状を見据えた会心の一策。これまで、著者の作品を何冊も読んできましたが、これほどまでに考えさせられたことはなかった。買って半日で読み切ってしまうほど、没頭させられる作品です。

重度な認知症になってしまった本人は家族に負担がかかるとわかりながらもそのまま生きながらえることを望むのか?一方で家族は金銭面の負担を抱えながらも生きながらえさせることを望むのか?果たして両者の思惑は一致しているのか?介護にかかる金銭面の負担は人間の理性をむき出しにし、人間関係をギクシャクにさせる。数多くの患者を診てきた医者の中で生まれたある盟約、それはどんなものだったのか?倫理的に問題はないのか?

主人公とその弟にて交わされた最後の盟約には感動を覚えました。自分の今後の人生を色々と考えさせられた作品です。是非とも読んでください!!